神道セミナー第44回「稲荷大神講座 第一講」を開催しました

皆さま、こんにちは。
光明稲荷神社 宮司 髙野みどりです。
2026年8月23日、神道セミナー第44回を開催させて戴きました。
今回から、新たな学びの歩みとして「稲荷大神講座」が始まりました。
第一講のテーマは、
「稲荷大神様は、いつ稲荷山へ御鎮座されたのでしょうか」
です。
稲荷大神様を日頃よりお敬いされている方も、最近になって稲荷信仰に関心を持たれた方も、
「稲荷大神様とは、どのような神様なのだろう」
「いつから稲荷山にお祀りされているのだろう」
と思われたことがあるかもしれません。
今回は、そのような素朴な問いを入口として、**「神話」「歴史」「信仰」**という三つの視点を大切にしながら、稲荷大神様への理解を皆様とご一緒に深めてまいりました。
神話・歴史・信仰の三つの視点から稲荷大神様を考える

今回の講座で大切にしたことの一つが、「一つの視点だけから神様を捉えない」ということです。
神話として語られていること。
歴史の中に記録され、伝承されていること。
そして、人々が長い年月をかけて大切にしてきた信仰。
それぞれを混同するのではなく、その違いを知ったうえで一緒に見ていくことで、稲荷大神様について、さらに深く考えることができます。
講座では、それぞれの項目ごとにワークも取り入れました。
皆様のご意見や感じられたことをシェアしながら進めることで、ご自身だけでは気づかなかった新たな視点や発見もあったのではないかと思います。
①「神様はいつ存在されたのでしょうか」
最初に皆様と考えたのは、
「そもそも神様は、いつから存在されているのでしょうか」
という問いです。
これは今回の講座を進めるうえで、とても大切な入口となりました。
「神様の存在」と「神社の創建」は、必ずしも同じことではありません。
ある神社が「○年に創建された」「○年に御鎮座された」と伝えられているからといって、その年月日に初めて神様が存在されたという意味ではありません。
そこで御鎮座の年月日についても、歴史・神話・信仰、それぞれの観点から考えていきました。
②『古事記』に記される宇迦之御魂神
続いて、『古事記』に記される宇迦之御魂神についてお話ししました。
『古事記』には、宇迦之御魂神についてどのように記されているのでしょうか。
そして、その記述をどのように捉えることができるのでしょう。
文献に記された内容とともに、これまで私自身が宮司として大神様にお仕えする中で体得してきたこと、また先人たちが残したさまざまな書籍や資料を研究する中で考えてきたことも交えながら、稲荷大神様のご存在についてお話をさせて戴きました。
③ 稲荷大神様は、いつ稲荷山へ御鎮座されたのでしょうか
そして第一講の中心となる、
「稲荷大神様は、いつ稲荷山へ御鎮座されたのでしょうか」
というテーマへ進みました。
稲荷大神様の稲荷山への御鎮座は、**和銅4年(711年)**と伝えられています。
しかし、ここで大切なのは、
「神様の存在」と「神社の創建・御鎮座の伝承」とを分けて考えてみること
です。
神話の時間と、歴史として記録される時間。
そして、人々が祈りを重ねてきた信仰の時間。
それぞれの違いを見ながら、歴史的な背景や神話・伝承なども含めて、皆様と考えてまいりました。
④ なぜ稲荷山だったのでしょうか
そして、もう一つの大切な問いが、
「なぜ、稲荷山だったのでしょうか」
ということです。
『山城国風土記』逸文に伝わる稲荷山の御鎮座伝承にも触れながら、稲荷山という場所そのものについて考えていきました。
「信仰の山」とは何でしょうか
神様がお祀りされる場所として、なぜ「山」が大切にされてきたのでしょう。
そして数ある山々の中から、なぜこの山が信仰の山となったのでしょうか。
「神様の山」とは、そもそもどのような場所なのでしょう。
こうした問いについても、さまざまな角度からお話をさせて戴きました。
稲荷山と秦氏の関わり
稲荷山への御鎮座を考えていくうえで、避けて通ることのできない存在の一つが秦氏です。
稲荷山と秦氏には、どのような関わりがあったのでしょうか。
御鎮座伝承だけを見るのではなく、その土地に生きた人々、歴史的背景、そして信仰という視点も含めながらお話をしました。
稲荷大神様は「命」を紡いでくださる大神様

そして今回、皆様にぜひお伝えしたかったことがあります。
稲荷大神様というと、
「五穀豊穣の神様」
「商売繁盛の神様」
という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
もちろん、それらも長い信仰の歩みの中で大切にされてきた大神様のお働きです。
しかし、稲荷大神様のお働きは、果たしてそれだけなのでしょうか。
今回の講座では、そこからもう一歩深く、私たちの「命」そのものと大神様とのつながりについてもお話をさせて戴きました。
水、雨、大地、実り――すべては命へとつながっている
私たちが生きるために欠かすことのできない水。
天から降り注ぐ雨。
大地を潤す自然の営み。
そして大地から芽吹き、育ち、やがて実りとなる稲や作物。
水が大地を潤し、
大地が作物を育み、
作物が実り、
その実りを私たちが「食」としていただき、
身体が養われ、
命がつながっていく。
一つひとつを別々に見るのではなく、大きな流れとして見てみると、すべてが「命」へとつながっていることに気づきます。
水から実りへ。
実りから食へ。
食から身体へ。
そして身体から命へ。
そこには、命を育み、守り、そして次へと紡いでいく大きな循環があります。
衣食住を司る大神様と私たちの暮らし
稲荷大神様は、私たちの衣食住に深く関わる大神様としても敬われてきました。
衣食住とは、特別な時だけ必要なものではありません。
着ること。
食べること。
住まうこと。
そのすべてが、私たちが「生きる」ために欠かすことのできないものです。
そう考えてみると、稲荷大神様のお働きは、私たちの日々の暮らしそのもの、そして命そのものと深くつながっているのではないでしょうか。
今回の講座では、稲荷大神様を単に「穀物の神様」「商売繁盛の神様」というところだけに留めるのではなく、
私たちの暮らしを支え、命を育み、その命を紡いでくださる大神様
という視点からも、皆様にお伝えをさせて戴きました。
神道の学びは「知識」だけではありません

今回の第一講で皆様にお伝えしたことを、三つの視点から振り返ってみます。
神話――
神様は、天地のはじめからお働きになっている存在として語られます。
歴史――
稲荷大神様の稲荷山への御鎮座は、和銅4年(711年)と伝えられています。
信仰――
稲荷大神様は今も人々の暮らしとともにある神様として敬われ、祈りが受け継がれています。
神様を「知る」ことから「敬う」ことへ
神道では、神様を「知識」として理解することだけではなく、神様を敬い、日々の恵みに感謝する心も大切にします。
稲荷大神様について学ぶことも、単に歴史上の年代や出来事を覚えることだけではありません。
私たちが毎日いただいている水。
食べることのできる食物。
雨や大地をはじめとする自然の恵み。
安心して暮らすことのできる場所。
そして、今日こうして生きている命。
普段は当たり前だと思っている一つひとつに目を向けることもまた、大神様への感謝へとつながっていくのではないでしょうか。
神話・歴史・信仰、そして今を生きる私たちへ

神話は、神々のお働きを語ります。
歴史は、人々が神様を敬い、お祀りしてきた歩みを伝えます。
そして信仰は、その祈りを今の私たちへとつないでいます。
神話では、神様は時を超えた存在として語られます。
歴史をたどれば、稲荷大神様は711年に稲荷山へ御鎮座されたと伝えられています。
そして信仰の中では、稲荷大神様は今も私たちの暮らしとともにあり、多くの人々から敬われています。
神話・歴史・信仰。
三つの視点を合わせて見るとき、稲荷大神様のお姿は、より深く、より豊かに私たちの心に映し出されるのではないでしょうか。
そして、その学びの先にあるものは、遠い昔の神話や歴史だけではありません。
水をいただけること。
食をいただけること。
暮らす場所があること。
そして今日、命があること。
その一つひとつを「当たり前」とせず、感謝すること。
稲荷大神様について学ぶことは、私たち自身の「生きる」ということを、もう一度見つめることにもつながっているのではないかと思います。
今回の学びが、皆様の日々の感謝と祈りへとつながりましたら幸いです。
ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。
ご参加者様からの感想

今回のセミナーでは神様の神話、歴史、信仰についての内容でしたが
言葉通りの内容ではなく、始まりを知り、実り(ご飯)の大切さ感謝する心を学べ
改めて身近なものにありがたみを持てたセミナーでした。
また次回も楽しみにしております。 (zoomでご参加/T.Wさま)
次回の神道セミナー「稲荷大神講座 第二講」について

次回の神道セミナーは、2026年9月20日を予定しております。
第一講に続き、稲荷大神様と稲荷山について、さらに一歩深いところへ進んでまいります。
稲荷大神様と稲荷山をさらに深く学びます
次回は、稲荷大神様としてお祀りされる、
宇迦之御魂大神様
大宮能売大神様
佐田彦大神様
についてお話ししてまいります。
そして、
「一ノ峰・二ノ峰・三ノ峰とは、どのような場所なのでしょうか」
「御眷属様とは、どのようなご存在なのでしょうか」
「お塚信仰とは、どのような信仰なのでしょうか」
など、稲荷山と稲荷信仰について、第一講からさらに歩みを進めてお伝えしてまいります。
稲荷大神様を「知る」だけではなく、その御心やお働きについて考えながら、皆様とともに学びを深めてまいりたいと思います。
